猫が好き!


 今日は彼の家にお泊まりだから、もしかして……という乙女心の機微とか、事前の覚悟とかありえない。

 元々黒シンヤは唐突なのだから、唐突にその時がやってくる事ぐらい、常に意識して然るべきだ。

 ただでさえシンヤには長い間、お預けを食らわせている。
 わざとではないにしても、あんまり長引かせては、瑞希が言ったようにかわいそうな気がする。

 でもお風呂ぐらいは入らせてもらえないだろうか。
 この時期、半端なく汗をかいているのだ。

 そんな事を考えながら、真純が必死に覚悟を固めようとしていると、目の前でシンヤがクスリと笑った。


「冗談だよ。そんな顔しないで」


(あれ? もしかして犬が帰ってきた?)

 シンヤはソファに座り直し、真純の手をとって身体を引き起こした。

 拍子抜けして唖然とする真純に、シンヤは苦笑する。

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