猫が好き!
そういう意味か、と今頃になって真純は思い至った。
(わざわざそんな事、断る口実に使わないよ、恥ずかしい)
そう。
断る口実なんかない。
けれど、唇でなければいいかと思った合図が、案外ハードルが高かった。
真純からキスをするという事は、真純がその気だとシンヤに知らせる事だ。
つまり「エッチしよう」と言っているようなものなのだ。
その時シンヤがその気じゃなかったら、と思うと恥ずかしくてしょうがない。
それがあるから今まで踏ん切りが付かないまま、中学生のような清らかな関係を続けている。
決して熟年夫婦のように、桃色の感情が枯れているわけではない。
だが、どこかで踏ん切りをつけないと、いい加減シンヤにも愛想を尽かされるのではないかと危惧しているのも事実だ。
真純は大きくため息をついて席を立つ。
窓の外にはチラチラと雪が舞っていた。
シンヤと迎える二度目のクリスマスが、もうすぐそこまでやって来ていた。