猫が好き!
「なんで0を1に変えろって命令しなかったの?」
「確実を期するなら、そうするんだけどね」
そう言いながら、シンヤは机の上に十円玉を数枚並べた。
「これ、全部裏にしろって言われたら、ひとつずつ裏か表か見なきゃならないよね。でも全部ひっくり返せって言われたら、見る必要ないでしょ? ハルコの持ってる十円玉は何万枚もあるんだ」
スーパーコンピュータのハルコが持つユーザデータは、辺奈商事とその子会社、関連企業、そして協力会社の社員を含む膨大な量だ。
反転させる方が早く済む事をハルコは知っていた。
ダッシュがそういう命令を下す事を予測して、シンヤのIDだけパスワードと共に利用状況をわざと不可に書き換えておいたのだろう。
「ハルコ賢ーい。でもそれならパスワードまで変えなくてもよかったんじゃないの?」
「ID使えなくなったらみんな騒ぐじゃん。そして自分のはどうだろうって確認するでしょ? その時、僕のだけ使えたら、ダッシュにすぐ見つかっちゃうよ」
「なるほど! そこまで見越してたなんて、ハルコすごいよ」