猫が好き!
辺奈商事に連れてこられた直後のダッシュは、ガチガチに緊張していて何を訊いてもろくに口をきかなかったらしい。
警察に突き出すわけではない事を説明し、なだめすかしてようやく普通に話すようになった。
「初対面や特殊な環境だと緊張するみたいね。慣れてくると理路整然と話すのよ」
のんきに笑う瑞希に、真純は心配になる。
野放しにしてまた同じ事を繰り返したらどうするのだろう。
今回の失敗を踏まえて、相手はより巧妙になってくるはずだ。
「本当に警察に言わなくて大丈夫なの?」
「大丈夫よ。ハルコのセキュリティも強化したし、ダッシュは来年うちの社員になるし」
「へ? 雇ったの? 迷惑かけられたのに」
「だってもったいないじゃない。ハルコの仕様を細かく理解してるハード技術者って貴重なのよ。増員要請が出てたけど、なかなか見つからなくて困ってたし」