猫が好き!
シンヤと一緒にいられるのは、あとほんの少しだけ。
自分が会社を辞めればシンヤとは別れなくてもいいのかもしれないが、それは心配してくれた瑞希を裏切る行為だ。
学生時代からの親友を裏切って、男に走るほどの情熱は真純にはなかった。
こんなところは、つくづく自分は冷めた大人なんだな、と思う。
シンヤと同年代の若さがあれば、勢いに任せてシンヤを選んだかもしれないのに。
けれどシンヤに騙されていたと分かった今でも、彼を憎みきれずにいる。
あの子犬のように人懐こい笑顔も、隙あらばまとわりついてくる温かい腕も、もうすぐ失われてしまう。
それを思うと、胸が痛んだ。
できるだけゆっくり歩いたつもりなのに、気が付けば家にたどり着いていた。
ゆっくりと玄関の扉を開ける。
すると、昨日と同じように、シンヤが笑顔で駆け寄ってきた。
「真純さん、おかえりーっ!」
「待て!」
「え?」