君に告げよう
冷たい風が頬を突き刺し、一瞬、身震いする。
門の前で立ち止まった僕を、永輝くんが「遼太郎」と呼ぶ。
「財布なんてどこにもないぞ?」
あるわけがない。
永輝くんと二人きりで話したいがためについた嘘なのだから。
永輝くんのそばには、四六時中、姉さんがいる。
片時も離れずに……――。
「……姉さん、元気そうだね」
背を向けたまま呟いた瞬間、背後でぴんと張り詰めた空気を感じた。
自分から切り出しておいて、僕には振り返る勇気がなかった。
「そうだな。そばにいることで身体を傷つけることがなくなるのなら……」
「永輝くんはそれでいいの?」