君に告げよう
涙をこぼさないように必死で堪える僕の背中を、永輝くんは優しく何度も叩く。
泣きそうなのに、なぜか僕は「ははっ」と小さく笑った。
「永ちゃーん!遼太郎くん、もう帰ったー?」
姉さんが大きな声で呼びかけながら外に出てくる。
門の前に立ったままの僕と永輝くんを見て、姉さんはきょとんとした表情で首を傾げた。
「どうした?」
「あっ、そうそう。遼太郎くん、電話だよ。お母さんから!」
「……母さんから?」
いったい、何の用だろう?
僕は急いで家の中に入り、電話に出た。
母さんは「遼太郎、何時に帰ってくるのか分からないから」と前置きして、伊地知から電話があったことを伝えた。
「また電話する」と伝言したようだけれど、僕はそのまま伊地知の家へと向かった。