君に告げよう

「は?トランプ?ガキじゃあるまいし。花札しようぜ」

「花札!?そんなのやったことないよ。それに持ってないし」

「……じゃあ今日はトランプで勘弁してやるよ。次は花札だからな」



強引に決め付け、伊地知は笑って「花札、準備しておかないとね」と言った。


ババ抜きと七並べしか知らなかった僕に、伊地知は「大富豪しよう」ととんでもないことを言い出した。

拒絶する僕を無視して強引に持ち札を配り始め、伊地知はやり方を説明し始める。


何度かやって、ようやくコツを掴めた頃には……



「もう一回するぞ!次は負けねぇぞ」

「えー?またやるのー?今度はババ抜きしようよ」

「んなもん、二人でやったってつまんねぇぞ」



すっかり僕の方がハマっていたんだ。


伊地知が、地獄の連続大富豪から解放されたのは夕方のことで。

僕はやっと勝つことができて、スッキリした気持ちのまま帰ることにした。

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