君に告げよう
不意に呼び止められ振り返ると、そこには高校の制服を着た女の子が立っていた。
「そうですけど……」
「あぁ、やっぱり。宗佑に話を聞いていたから、もしかしたらと思って……」
伊地知のことを『宗佑』と呼んだその子は、伊地知のお姉さんだった。
「部屋に手紙があったの」
「……手紙?」
差し出された一通の手紙。封筒に『竹島遼太郎様』と、男にしてはきれいな字で書かれてあった。
初めて見る、そして今はもういない伊地知の字に、目頭が熱くなった。
「あと……これ…。手紙と一緒に置いてあったの」
次に差し出されたのは、茶色の小さなケースに入れられた花札だった。
「昨日の夜ね、買って来たみたい。宗佑、竹島くんと花札するんだって、すごく嬉しそうにしてた」