君に告げよう
無理して笑っていたお姉さんの顔が少しずつ崩れていく。
「それなのに……、今朝、なかなか起きてこないから…っ、起こしに行ったら……」
お姉さんは声を震わせながらも言葉を続けようとしていた。
けれど、伊地知の変わり果てた姿を目の当たりにしたことを思い出したのか、嗚咽を漏らしながら崩れるようにして座り込んだ。
祭壇に飾られた遺影の中で、伊地知はあの明るい笑顔のまま僕を見ている。
永輝くんと一緒に焼香をした後、せめて顔が見たいと棺に向かおうとしたけれど……。
「――ごめんなさい。……見ないであげて……」
遺族席に座る伊地知のお母さんが、ハンカチで口元を押さえながら懇願した。
棺の蓋も、そして小窓さえも固く閉ざされていて、人目に晒したくないという遺族の気持ちが表れていた。
「――遼太郎。行くぞ」
棺に視線を落としたまま、その場を離れようとしない僕の腕を永輝くんが掴む。