君に告げよう

「なん……で……」

「遼太郎」

「昨日あんなに笑ってたじゃないか」



伊地知が眠っている棺から僕を引き離そうと、永輝くんは掴んだ手に力を込める。

僕は掴まれた腕と両足に力を込め、精一杯抵抗する。



「……おまえは約束を破るようなヤツじゃねぇだろ?ふざけんなよ……っ」

「――遼太郎!」



永輝くんは僕以上に力が強くて……

体全部であんなにも抵抗していたのに、僕は永輝くんに引きずられるようにして連れて行かれた。


家を出て玄関先に設けられた受付で、僕はぴたりと足を止めた。



「――手紙……」



焼香をする前に制服のポケットに押し込んだ、伊地知からの手紙のことを思い出した。

受付の簡易ライトの下で、僕は糊付けされた封を丁寧に剥がした。

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