君に告げよう

穏やかな表情で話す伊地知のお父さんの言葉に、僕は閉口した。



「君は宗佑の死を無駄にしなかったじゃないか。勇気を持って動いてくれた。本当にありがとう」



お父さんが再び僕に頭を下げ、僕もつられるようにしてうつむく。

勇気を持って動くことを教えてくれたのは永輝くんだ。

永輝くんがいなかったら、僕は葛城たちを思う存分殴って、それで終わりにしていた。

暴力がすべてを解決すると思っていたから……。



――僕はなんて非力なんだろう。



伊地知の家を出ると、外で待っていた永輝くんと姉さんが静かに笑う。



「遼太郎くん……。そんな顔してちゃ、伊地知くんが心配するわよ」



姉さんの言葉に涙がこぼれた。

そんな僕を、姉さんがふわりと抱きしめた。

< 135 / 301 >

この作品をシェア

pagetop