君に告げよう
「学校卒業したら正社員の職に就かないといけないのか?」
「いけないってわけじゃないけど……」
茅島は口を噤む。
僕は『とりあえず』就職先を探すことができずにいた。
就職して、やっぱり自分には合わないとか、やりがいがないとか、そんな理由で嫌々ながら働きたくなかったし、それに途中で辞めることもしたくなかった。
「やりたいことが見つかったら就職するよ」
「……現実なんて、そう甘くないよ?」
「……んなこと分かってるって」
「もう!本当に呑気なんだから!」
膨れっ面をした茅島は、本気で僕の背中を叩く。
痛みでじんわりと熱くなる背中。外からの生暖かい風。
叩いた後も何やらブツブツと小言を言う茅島の言葉には耳も貸さず、僕は【来来軒】の看板を眺めながらぼんやりと思った。
そういえば……あの店、バイト募集中って貼り紙がしてあったよな……。