君に告げよう

「これからバイト?」

「あぁ」

「……コンビニのバイトって楽しい?」

「楽しいよ。いろんなことを忘れられるから」



笑って言う永輝くんの言葉に少し重みを感じる。

忘れたいいろんなこと。

それが何なのか、敢えて聞かなかったけれど、きっと姉さんとのことじゃないかと僕は思った。



「夏休みのバイト、頑張れよ」

「うん」



永輝くんはそう言って、玄関に向かった。

族の引退と同時に永輝くんはバイクを売り、代わりに真っ赤なスポーツカーを手に入れた。

過去からの卒業。

けれど、姉さんとの関係は変わらず続く。まるで生活の一部になっているかのように、とても自然な流れで……。

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