君に告げよう
第六章

*変化*



【来来軒】でのバイトは、夏休みの間だけのつもりだった。



「遼太郎!六番の麺カゴ、湯きり!」

「はいっ!」



ムッとする暑さの中で働き続けた、高校生活最後の夏休み。

働くことが初めてだった僕に対して、大将は手加減なしだった。

モタモタしていたら蹴りを入れられ、些細なミスをすればこっぴどく叱られ……。


『いつだって辞めてもいいぞ』


見下したように、大将は何度となく僕に言った。

腹の底からムカついて、僕は、辞めるどころか、夏休みが終わってもバイトを続けた。



そして今……。

高校を卒業した後も、僕は朝から晩まで【来来軒】で働き続けている。

卒業直前に車の免許を取り、これまで歩いて通っていた【来来軒】に、母さんから借りた金で買った車で通う。

車のエンジンをかけるたびに、自分が少しだけ大人になったような気がした。

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