君に告げよう

「永輝、ちょっといいか?チームのことで聞きたいことがある」



盛り上がっているなか、散々酒を飲んだくせに顔色ひとつ変わらない啓介さんが、突然立ち上がった。

永輝くんは何かを覚悟していたかのように「はい」と言うと、啓介さんの後に続いて家を出て行った。



「なんだろ?」



二人の間に一瞬だけ流れた、ただならぬ空気。

思わず僕も立ち上がって後に続こうとしたけれど、それを姉さんが止める。



「止めといた方がいいよ」

「……やっぱり?」

「当たり前じゃない」



姉さんに厳しく咎められ、僕たちは二人きりで酒を飲み続けた。

永輝くんが今まで飲んでいた杏酒を、姉さんがぐびぐびと飲み干す。

甘いものが苦手なくせに、永輝くんは杏酒がお気に入りで、いつもロックで飲んでいる。

< 170 / 301 >

この作品をシェア

pagetop