君に告げよう
「ねぇ、勝手に飲んだら永輝くんに怒られるよ?」
「いいの!永ちゃんの物はあたしのものなの!」
勝手なことを言いながら、姉さんは空になったグラスに杏酒を並々に注ぐ。
注がれた杏酒を一口飲むと、姉さんは「ちょっとトイレ」と言って、部屋を出て行った。
永輝くんと啓介さんはまだ外で話しているらしく、戻ってくる気配がない。
チームのこと……って、何の話だろう。
とっくに引退した永輝くんが、チームと関わることなんてないのに。
なんだって今頃……。
気になって、姉さんがトイレに行っているのをいいことに、僕は玄関へと向かった。
「……姉さん?」
玄関のドアの前。
トイレに行ったはずの姉さんが、ドアに耳を押し付けるようにして外の様子を伺っていた。