君に告げよう

「ねぇ、勝手に飲んだら永輝くんに怒られるよ?」

「いいの!永ちゃんの物はあたしのものなの!」



勝手なことを言いながら、姉さんは空になったグラスに杏酒を並々に注ぐ。

注がれた杏酒を一口飲むと、姉さんは「ちょっとトイレ」と言って、部屋を出て行った。


永輝くんと啓介さんはまだ外で話しているらしく、戻ってくる気配がない。

チームのこと……って、何の話だろう。


とっくに引退した永輝くんが、チームと関わることなんてないのに。

なんだって今頃……。


気になって、姉さんがトイレに行っているのをいいことに、僕は玄関へと向かった。



「……姉さん?」



玄関のドアの前。

トイレに行ったはずの姉さんが、ドアに耳を押し付けるようにして外の様子を伺っていた。

< 171 / 301 >

この作品をシェア

pagetop