君に告げよう
第七章
*彼女の涙*
永輝くんの職場を出る前に、僕は柚羽さんが住むアパートへの地図を受け取った。
永輝くんがものの数秒で、迷いもせずに書き上げた手書きの地図。
その早業を見て、永輝くんが何度も柚羽さんの元を訪れていることはもちろん、柚羽さんへの愛情さえも感じた。
僕は地図を落とさないように、ジーンズの内ポケットに押し込んだ。
そして、夜。
家を出る前に啓介さんから電話があった。
『俺は立ち会えないから……。マジで頼むぞ』
その電話はきっと、姉さんに隠れてかけてきたのだろう。
啓介さんは今夜の計画を早口で確認し、最後にそう言うと素早く電話を切った。
まだ少し肌寒い三月の夜。
僕は今日の計画が誰にも邪魔されないことを祈りながら、永輝くんを僕の家に送り届け、そして、彼女……柚羽さんのアパートへと車を走らせた。