君に告げよう
「ちょっと待っててください」
僕がここに来た理由を言ったとしても、きっと彼女はドアを開けない。
そう察した僕はアパートのすぐ脇に止めた車へと向かい、さっき自分の家に送り届けた永輝くんの携帯に電話した。
「あ、永輝くん?今、柚羽さんのアパートなんだけどさ……」
『どうした?』
「彼女、警戒してドア開けてくれないんだよ。永輝くんから電話してもらえないかな?」
僕がそう言うと、永輝くんはすぐに電話を切った。
そして、どれだけ待ったのだろう。
その場で待ちながら吸っていた二本目のタバコを消した瞬間に、アパートの階段を下りてくる足音が聞こえてきた。
「あの…、遼太郎くん?ごめんなさい、あたし……」
初めて顔を合わせた柚羽さんは……、姉さんに似ていた。
肩まである髪。吸い込まれそうな大きな瞳。