君に告げよう
「さて……と」
彼女の笑う顔に釘付けになっていた僕は、永輝くんが立ち上がった瞬間に我に返った。
壁に掛けられた時計を見た彼女も続いて立ち上がり、「じゃ、あたし帰るね」と永輝くんに微笑む。
時計は18時をさしていた。
あぁ、そっか。
今日は金曜日だったな……。
「遼太郎。かんなを家まで送ってくれないか?」
自分の部屋に戻ろうとした永輝くんが振り返って、思い出したように僕に言った。
「えっ?なんで?啓介さんの所に行くんでしょ?それなら永輝くんが……」
「啓介さんとこに行く前に寄るところがあるから」
「……でも……」
いつもなら、永輝くんの頼みごとに対して、僕は「うん、いいよ」とすんなりと引き受けるのに、今回はそうもいかなかった。