君に告げよう

けれど……。

『ごめんなさい』という言葉を口にした彼女に、なぜか懐かしさを感じた。

初めて会う人なのに……どうしてだろう……。



「無理もないよ」



そんな小さな疑問なんて、今はどうでもよかった。

とにかく早く、この人を永輝くんに会わせないと……。

僕は助手席のドアを開けると、柚羽さんに乗るように促した。


走り出した車内で、僕は今夜の計画のことを柚羽さんに話した。

柚羽さんは人見知りしない性格なのか、それとも僕が永輝くんの従兄弟だからなのか。

緊張感など全く見せずに、落ち着いた態度で僕に接した。


でも、その節々で見え隠れする柚羽さんの寂しげな表情。

永輝くんに会えるのに、どうしてそんな顔するんだよ。

もしかして……、もう会わないという永輝くんの決心に気付いているのか……。



永輝くんが待つ僕の家。

車が家の前に着くと、柚羽さんは飛び出すようにして車を降りた。

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