君に告げよう

僕は柚羽さんに見送られるようにして、ゆっくりと車を出した。

ルームミラー越しに、僕の家の玄関へと走る柚羽さんの姿を見る。

微妙な表情を見せていたけれど、やっぱり永輝くんに会いたい気持ちは変わらないのだと思った。


当てもなく走らせる車の中。

事前に啓介さんと打ち合わせた。

『一時間が限度ってところだな』

その一時間、啓介さんが姉さんを引き止めてくれている。



……国道にでも行こうかな……。

かつてチームにいた頃に何度となく走り抜けた国道に向けて車を走らせる。

だけど、もうすぐ国道というところで、妙な胸騒ぎがした。


大丈夫、大丈夫だから……。

姉さんの影を感じて不安になる自分を懸命に落ち着かせるけれど……。

胸のあたりが、徐々に大きくなる不安で気持ち悪くなってきて……。

僕は再び自分の家へと車を走らせた。

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