君に告げよう
彼女を送るなんて……。
それって、啓介さんの家まで二人きりってことだろ?
今日初めて会った女と、しかも、あんな場面を目撃したのに……。
「オラッ、遼太郎!さっさとかんなを送ってやれよ」
渋っていた僕に優美ちゃんは、僕のカバンと彼女の荷物を無理やり押し付けた。
「じゃ、頼んだぞ。遼太郎」
「ちょっ、永輝くんっ!」
永輝くんは僕の返事なんか聞かずにさっさと部屋に戻り、優美ちゃんは夕食の準備をするために台所に向かった。
「遼太郎くん、お願いしてもいい?」
「……あ…っ、はい…」
物音のする台所を見ると、背を向けた優美ちゃんが包丁を取り出していた。