君に告げよう

「…永輝くんが離れようとすれば姉さんはリストカットをする。そのことを先代の総長が知ったら悲しむから……。だから永輝くんは姉さんのそばにいるんだ」



――……柚羽さん。

僕の家で、永輝くんと姉さんの間に何が起こったのか、僕は知らない。

だけど、これだけは分かってほしい。


永輝くんは柚羽さんを、とても大切にしている。

僕は今まで、永輝くんがこんなにも一人の女に真剣になった姿なんて見たことがなかったよ。



「泣くなって」



僕の隣りで小さく肩を震わせながら、柚羽さんは泣き出した。

僕の左手は自然と彼女の頭を優しく撫でる。


昔、永輝くんは、よくこうやって僕の頭を撫でていた。

柚羽さんと出会ってから、それはパタリと止んだけれど……。

今ならその理由がはっきりと分かる。

僕の頭を撫で続けた永輝くんの左手は……。

今は、姉さんのことで思い悩む彼女に差し伸べられていたんだ。

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