君に告げよう

*傷痕*



凍えるような寒い冬の夜。

永輝くんはすべてを終わらせた。

柚羽さんのことを一言も口にせず、以前のように姉さんと過ごす毎日。


そして……柔らかい春の陽射しが僕たちを包み始めたある日……。

永輝くんはこれまで使っていた携帯を姉さんに促されて解約した。

永輝くんが新しく手に入れた携帯は、姉さんと全く同じ機種だった。



『――もう必要ないでしょう?』



アドレスのデータを新しい携帯に移し変えた後。

姉さんはそう言って、残っていた柚羽さんの連絡先を迷いもせずに消去したと、永輝くんが教えてくれた。


それを機に永輝くんの口から語られた、あの夜の真相……。



「えっ?……柚羽さんと永輝くんが俺の家で会うことを、姉さんは知っていたのか?」

「あぁ。啓介さん、おまえに電話しただろう?」



僕が永輝くんを迎えに行く前。

啓介さんから電話が掛かってきた。

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