君に告げよう
第八章
*指輪*
こんなにも辛くて悲しいことがあっても、毎日の生活は何一つとして変わらない。
朝起きて、仕事に行って……。
夜になれば眠りについて……。
淡々とした日々の中で、ゆっくりと変わるのは季節だけで……。
梅雨という時期は、悲壮感をさらに漂わせる。
永輝くんの気持ちを少しでも晴れさせようと、無理やり付き合わせた僕の買い物。
服を買いに行くから付き合ってと誘い出した。
デパートの中に入ったと同時に、姉さんが最近よく結婚情報誌を見るようになったと永輝くんから聞いた。
永輝くんは他人事のように、またいつものぼんやりと遠くを見る目で言葉をこぼした。
「俺は、結婚しないといけないのか?」
「……そんなの永輝くんが決めることだろ?」
そうは言っても、永輝くんが姉さんの勢いに流されて、本当に結婚してしまいそうな気がした。