君に告げよう
小さくなった永輝くんの背中に向かって僕は大きな声で言う。
永輝くんは振り返りもしなかった。
いっそのこと、このまま黙って帰ろうと思った。
けれど僕の足はデパートの出口には向かわず、その場から動くことができなかった。
結婚するって……。
そんなに簡単に決めてしまっていいのか?
この先ずっとずっと、死ぬまで姉さんのそばにいるのか?
他の人を思いながら偽りの家族を持つなんて……。
思っていたより早く、永輝くんは宝飾店から出て来た。
そして帰りの車の中で、前を見たまま僕に言った。
「指輪、買ったよ」
その言葉を聞いた瞬間、僕は瞼を自然と閉じた。
……もう……、後戻りはできないんだ。
姉さんだけが望んだ未来しか、やって来ないんだ……。