君に告げよう
それから一週間が過ぎて……。
仕上がった指輪を受け取ったはずの永輝くんは、僕に何も言わなかった。
姉さんの左手の薬指には、永輝くんが去年のクリスマスに買ってあげたファッションリングが光っている。
指輪……渡していないのか?
結婚しようって、姉さんには伝えていないのか?
二人の間に流れる空気を見て、まだ結婚の話が出ていないことを微妙に感じ取る。
まだ……間に合うかもしれない。
そう思って、僕は何度も柚羽さんのアパートに向かうけれど……。
部屋のドアをノックするのはおろか、柚羽さんの部屋に続く階段を上ることもできずにいた。
僕が勝手に動いてどうなるんだろう。
『遼太郎くんじゃ、役不足よ』
そう笑った姉さんの言葉を思い出す。