君に告げよう

永輝くんは黙って、表情のない顔で考え込む。



「どんなに辛い別れ方をしても、大切な人のことを無理して忘れる必要があるのかな」



大切な人……。

一瞬、伊地知のことが頭をよぎった。

守りきれずに失った、僕の初めての友達。

突然の、残酷すぎる別れ。

だけど僕は、ほんの一瞬でも、伊地知のことを忘れたい、忘れようと思ったことはなかった。

忘れてしまったら、伊地知と過ごした日々のことがすべてが嘘になってしまうから。

……あいつが……悲しむから……。

それは生きている人間に対しても同じであると、僕は思っている。



「……永輝くん。生きていれば、いつかきっと会える時が来るよ。……きっと、状況が変わる時があるかもしれないんだよ」

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