君に告げよう

『……結婚するよ』


永輝くんの悲しげな瞳を思い出す。



「……まさか……」



僕はスッと立ち上がって、棺の中で眠る永輝くんを覗き込む。

今はもう、何一つとして真実を語らない永輝くん。


あの時の悲しげな瞳も。

柚羽さんへの思いを言葉にした口も。

固く閉ざされていて、もう二度と永輝くんから真実を聞きだすことはできない。



「……遼太郎?なにか心当たりがあるのか?」

「………」



永輝くん……、もしかして……この指輪は……。



「……いや、なにも思い当たることなんてないよ」



僕は、静かに永遠の眠りについた永輝くんの顔をじっと見つめた。

< 258 / 301 >

この作品をシェア

pagetop