君に告げよう
僕は啓介さんと、まだ一度も会ったことがなかった。
でも、永輝くんと優美ちゃんから啓介さんの話をよく聞いていたから、まだ会ってもいないくせに勝手に親近感を持っていた。
総長としての啓介さんと、普段の啓介さんのギャップはとんでもなく違うとか。
普段はどこか抜けているような感じで、くだらないことを言っては場の空気を一瞬で凍らせてしまうとか。
でも、総勢100人の族を纏め上げる総長としての実力はお墨付きで、啓介さんに惚れ抜いて族に入るヤツもいるとか。
永輝くんもそのうちの一人だった。
「お兄ちゃんとお姉ちゃんもいいけど、あたし、弟か妹も欲しかったんだよね」
空に輝く一番星を眺めながら彼女は言った。
「それって、欲張りじゃない?」
「あっ……、遼太郎くんから見ればそうだよね」
「そうだよ」