君に告げよう

「……遼太郎。啓介が来ている」



葬儀が始まる直前。

遺族席にぼんやりと座っていた僕は優美ちゃんに呼ばれる。

そして、人目を忍ぶようにしてやって来た啓介さんと会場の外に出た。



「すまない」



外に出るなり、啓介さんはガクリと膝を落とし、僕に頭を下げた。



「……こんなことになって……。永輝の親と優美には、葬式終わった後にちゃんと謝りに行く」



膝の上にポタポタと落ちた涙は水玉模様のような跡をつくり、やがてゆっくりと消えていく。

その様子を僕は無言で見入っていた。



「姉さんは?」



ぽつりと呟くと、啓介さんはようやく顔を上げる。

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