君に告げよう

あの場所から車ごと落ちて、姉さんが命を取り留めたってだけで奇跡的なことだ。


どうして、永輝くんなんだろう。

ここに来るたびに、僕はそう思う。

そして、なぜ姉さんなんだ、とさえも……。

生と死は紙一重であることを、痛いほどに思い知らされた。


僕は、姉さんを好きだと思う。

でも同時に、僅かな憎しみさえも生まれた。

真実を知れば、この憎しみは消えるのだろうか。



「………」



ポケットを探り、指輪を取り出す。

冷たく光る指輪。



【EIKI 1005】


存在しているだろう、もうひとつの指輪。



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