君に告げよう
「……あ……」



太ったと茶化され、僕をこれでもかと攻撃していた茅島の手がぴたりと止まった。

茅島の視線は、教室のある一点に集中していた。

視線の先は廊下側の一番前の席。

その席に座って本を読んでいたのは伊地知という男で、勉強だけが取り柄みたいなマジメな優等生。


その伊地知の席の前に……。

昨日まで僕を殴り続け、そして今日、登校してきた僕に下心みえみえな謝罪をしてきたあいつらがいた。



「次は伊地知くんだよ」



茅島は眉間に皺を寄せながら言う。

あいつらは胸くそが悪くなるような笑顔を浮かべていて、伊地知もまた笑顔を振りまいている。

見た限り、嫌なことを言われている様子ではなかった。


でも……――。

< 37 / 301 >

この作品をシェア

pagetop