君に告げよう
髪の毛をワックスで整えていた永輝くんの手がピタリと止まった。
「……なんでだろうな。かんなにせがまれると自然に受け入れてしまうんだ。頭ではいけないことだと分かっているのに」
「頭と身体が別々ってこと?」
「そういうことなんだろうな」
永輝くんはそう言ってワックスの蓋を閉めると、床に腰を下ろしていた僕の隣りに座った。
窓から差し込む夕日に照らされた、僕と永輝くんの長い影が床に映る。
「遼太郎。しばらく、ここには来るな」
「……えっ?」
思いもしなかった永輝くんの突然の言葉に、一瞬、耳を疑った。
反射的に永輝くんを見ると、永輝くんは真っ直ぐに僕を見て、もう一度同じことを言った。
「なんで……ダメなの?」