君に告げよう
揉め合う声は玄関のドアが閉まると同時に急に静かになっていく。
程なくして、ガレージに止めてある永輝くんのバイクのエンジン音が聞こえてくる。
何度かエンジンを吹かした後、マフラーの重低音を響かせながらバイクは出て行った。
急に静かになった家の中。僕の息遣いだけが響く。
こんな時に限って、優美ちゃんはまだ帰って来ない。
啓介さんに連絡しないといけないんじゃないか?
でも、連絡先が分からない。
姉さん……、姉さんも何でこんな時に限ってここに来ないんだよ。
少しでも何か役に立てないんだろうか?
永輝くんの部屋の中をウロウロと歩き回りながら考えるけれど、何も思い浮かばない。
僕はここで黙って待つしかないんだろうか?
下手に動いたら、逆にヤバイ状況になるかもしれない。
「くそっ!」
不甲斐ない自分に腹が立って、僕は勢いよく床に座り込んだ。