君に告げよう
一方的に話す茅島に適当に相槌を打ちながらゆっくりと歩く。
閑静な住宅街の一角に、伊地知の家はあった。
薄茶色の二階建てに大きな庭で、玄関口には犬小屋があり、その前で柴犬が昼寝をしていた。
僕と茅島の気配を感じた柴犬は目が合うなり、嬉しそうに尻尾を振る。
番犬の役目なんて全く果たしていない。
「こんにちはー。伊地知くんと同じクラスの茅島です」
『あぁ、悦子ちゃん?ちょっと待ってね』
インターフォン越しに聞こえてきた伊地知の母親の声。
程なくして玄関のドアが開き、エプロン姿の母親が出て来た。
「伊地知くん欠席していたから……」
茅島はそう言いながら、担任から受け取った伊地知の通知表やプリントを母親に手渡した。