君に告げよう
「なぁんだ、仮病だったわけ?」
伊地知の部屋の壁側に置かれたソファに腰を下ろすなり、茅島が安心したように笑った。
「ははっ。まあね」
「優等生も仮病使うのね!」
「まぁ、そう言うなって」
僕たちが部屋に入ってから、伊地知はずっと笑っている顔を保ち続けていた。
ずっとずっと、同じ表情の笑顔。
まるで、事前にプログラムされたかのような、少しも崩れない笑顔。
そして、じっと伊地知を見据える僕を、決して視界に入れないように振舞うぎこちない態度……――。
「……茅島。俺、喉渇いた。おばさんに何か飲み物もらって来て」
「は?ちょっと竹島くん、図々しいわよ?」
突然言い出した僕のわがままな要求に、茅島は眉間に皺を寄せた。