君に告げよう
面と向かって「ありがとう」と素直に言われたことが恥ずかしくて、僕は笑っている伊地知から顔を背けた。
「……休みの間、暇だったら電話しろ」
照れていることをごまかすように、僕は口を尖らせて命令口調で言う。
そんな僕の真意を見透かしたかのように、伊地知は「電話するよ」と明るい声で返した。
ここに来た時とは違った笑顔の伊地知に見送られながら、僕と茅島は歩き出した。
それから茅島を家まで送り、僕はそのまま永輝くんの家に向かった。
今日のことを報告しようと……。
そして、今日は退院祝いをするって優美ちゃんが言っていたし……。
少しずつ速度を増す歩調は次第に小走りになり、やがて全力疾走になる。
永輝くんの家に着いた頃には、猛ダッシュの末に息を切らす僕がいた。