君に告げよう

永輝くんがどうして、そんなことを言い出したのかさえも分かった。


きっとこれは、『ケジメ』なんだ。

永輝くんは退院したら、啓介さんの後を継いで総長になることが決まっている。

だから、すでに別れた彼女…しかも啓介さんの妹でもある姉さんとの関係を完全に絶とうとしているんだ。



「啓介さんのことは償っても償いきれないと思ってる」



泣き続ける姉さんを前に、永輝くんは引くこともせず淡々と話を続けた。



「かんなを『仲間』の一人として支えていくから……。だから……」



永輝くんの話を遮るように姉さんがゆっくりと立ち上がる。

ちらりと見えた姉さんの横顔に、僕はゾッとした。

生気さえも感じない虚ろな顔。目は完全に据わっていた。

いつも僕に優しく笑いかけてくれた姉さんの顔が頭を過ぎる。


姉さんはふらついた足取りで、部屋の壁側につけられた机の方に歩いて行った。

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