君に告げよう
僕がいたことに驚いた永輝くんが一瞬だけ振り返る。
でも今は、いつから僕がここにいたのかなんて呑気に聞いている場合じゃない。
「放してよ!!触らないで!!」
血の付いたカッターナイフを握りしめる姉さんの手を永輝くんが掴む。
姉さんは手を掴まれてもなお、左腕を切りつけようと力のある限り抵抗した。
「姉さん…っ、姉さん――!」
僕も永輝くんと一緒になって姉さんを止めようとしたけれど……。
「遼太郎、近寄るな。下がってろ」
それを永輝くんが止めた。
こんな状況でも……永輝くんは冷静で……。
表情ひとつ変えないまま、姉さんの右手を握り締めていた。