君に告げよう

永輝くんが退院したこと。

僕と伊地知が友達になったこと。

楽しい一日になるはずだったのに、それは脆くも崩れ去ってしまった。


永輝くんとの決別を拒絶した姉さんは傷の手当てを受けた後、永輝くんと一緒に家を出て行った。

入れ違いで帰って来た優美ちゃんは、永輝くんの部屋に点々と落ちていた姉さんの血を見て、しばらく呆然としていた。



「……永輝はどうすんだよ」



永輝くんの退院祝いに買って来たケーキを前に、優美ちゃんが口を開く。

その問いに僕は何も答えることができなくて、ケーキをぼんやりと見つめていた。

甘いものが苦手な永輝くんのために用意された、ほろ苦い味のガトーショコラ。

その色と味がますます気分を落ち込ませる。

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