君に告げよう
僕に背を向けたままの永輝くんは振り向きもせずに、メットを脱ぎ、エンジンを切った。
「……おかえり」
何も語らない永輝くんに声をかける。
それでも永輝くんは振り向かず、そして言葉さえも返さずに、黙々とバイクにカバーをかけ始める。
カバーをきちんとかけ終わった永輝くんがようやく僕の方を見た。
「ただいま」
疲れきった表情の永輝くんが、ジャケットのファスナーを下ろしながら僕に向かって歩いて来る。
「――永輝……くん……」
ジャケットの下から覗く白いシャツに染み付いた、いくつもの太い折れ線状を描いた血……。
聞かずとも分かる。姉さんの血だ……――。