君に告げよう

「俺さ、伊地知と友達になったんだ」

「……伊地知…。あぁ、あいつか」

「うん。葛城とも手を切るって言ってた」

「そうか。よかったな」

「……ごめん、こんな話……。今はそれどころじゃないのに」



自分から切り出しておいて謝る。

嬉しかった出来事を話すことで、永輝くんが少しでも気を紛らわせてくれたらと思った僕は、やっぱり単純で、まだまだ子供なんだろうな……。


だけど、永輝くんは。

いつもの静かな笑みを浮かべて、僕の頭を優しく撫でた。



「謝るな。かんなのことも気にするな。おまえが暗い顔していたら、余計に辛くなる」

「……でも……」

「おまえはいつものように、ボケたこと言って、笑っていればいいんだよ」

「……それって、貶してるのか?」



僕が口を尖らせると永輝くんはフッと笑う。

そして、「中に入るぞ」と僕を置き去りにして、さっさと家の中に入って行った。

< 96 / 301 >

この作品をシェア

pagetop