海の花は雪
ボンヤリと…かつては生きていた彼女に思いをはせて、夕暮れの空を見上げた。

「…じゃあハル、山形さん、自分こっちだから…また日曜日に…」

気づくと、深谷君が別れ道の前に立っていた。

「うん、深谷君、今日はありがとう。上手くやりなね」

山形さんは自分の手首を指しながら笑った。

「はい…」

「送るよ、深谷君」

「ありがとう…でも今日は時間も早いし…山形さん、どうするの?」

「ああ、山形さん、ここで待っててもらえますか?」

ためらいなく自分は答えて、山形さんをふり返った。

「うわっ、今めちゃめちゃ差をつけられた気分…」

山形さんがガックリと、分かりやすく落ち込んだ…

それを見た深谷君が小さく、くすっと笑った気がした。

「じゃあ、また」

深谷君は自分達に背を向けると、歩き始めた。

「気をつけてな〜」

自分が小さな背中に声をかけると、右手が軽く上がった…

しばらくその姿を見送ってから、山形さんと一緒に家路に着いた。
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