海の花は雪
早朝の…しかも日曜日のせいか、校門の前に彼らの他に人影はなく、僕らが到着するのを待っていた。

「…遅刻ですよ〜二人とも」

柔和な笑顔で話しかけてきたのは唯一、紅一点の戸川先生だ。

「いや〜すみません。道が渋滞しちゃって〜」

僕は頭をかきながら、ひょいと自転車の後部席から飛び降りた。

「山形さん、そ〜ゆ〜バレバレなのやめて下さいよ〜、おはようございます」

あらら…ハル君に、いさめられてしまった。

「おはようございます」

ニコニコと、ぜんぜん気にした様子もない用務員の高田さんが、挨拶を返した。

「おはよう、深谷君」

ハル君は自転車から降りると、小さく頭を下げた深谷少年に、改めて声をかけた。

ハル君の背後に、花びらを見た気がする…

それって、君の特技なの?

「修子ちゃん、お待たせ。山形さん寝起き悪くて…」

ハル君…君は寝起き良すぎだと、お兄さんは思うよ…

朝の6時から、草花の手入れを始める男子高校生って、君ぐらいなものさね…
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