海の花は雪
「じゃあ深谷君はそれを使って、この海底から地上へ出ようというわけだね?」

「うん…魔法の効力にはタイムリミットがあって…それから素質がないと、使えないらしい…どうします?」

ハルは腕を組むと黙り込んだ。

目の前を魚の大群が通り過ぎて行く…

「…その本に書かれた事が事実だとしたら…もしかしたら、魔法も使えるかもしれないねー…」

「うん…」

何の根拠があるわけでもない…ただ自分は、妙な確信を感じていた。

「…分かった、やってみようか?動くなら早い方がいい。とりあえず、ここにいて死を待つより建設的な気がするよ」

「ありがとう、ハル…保証は限りなくゼロに近いけど…」

「おう、海底脱出大作戦だな!…ところで、その魔法って?」

「あ…それなら、ここに…」

胸に付けていた名札を外すと、中から一枚のメモ用紙を取り出した。

そこにはカタカナで文字が書かれている…昨日、自分で書きとめたものだ。

…まさか、こんな使い道があるとは、夢にも思わなかった…
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