海の花は雪
ちょっとだけ、そんな短い会話をしてからシャワーを浴び始めた。

ただそんなやり取りが、ものすごく貴重なものに思えて、シャワーを浴びながら、しみじみとしてしまった。

しかし…いったいどうやって、研究所に深谷君と修子ちゃんは戻って来れたんだろう?

しかも自分達より先に…

それに…あれだけ皆をリードしていた山形さんの切れぶりも、驚きだし…

実はムリしていたのかなぁ…

責任とか…一番感じていたのは、山形さんだったのかもしれない…

「…山形さん…良かっですね、皆帰って来れて」

隣でシャワーを浴びている山形さんに向かって、声をかけた。

「…うん…ありがとう…ハル君…」

シャワーの流れる音に消え入りそうな、小さな声が返ってきた。


まだ…2時間ほどしか経ってないのに…今日はやけに、長い一日に感じる…

やっぱり、ちょっと疲れたかな…

海の塩をシャワーの水が洗い流して行く瞬間が、永遠のように感じられた。
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