海の花は雪
呼吸の限界まで息を止めていた…にもかかわらず、息はまったく苦しくなる事はなく、むしろずっと楽になっていった…

「…え?」

「深谷君、深谷君、大丈夫?」

海水が部屋を満たしているのに、ハルの声がハッキリと聞こえてくる…

静かに目を開けると、ハルが心配そうに自分をのぞき込んでいた。

「大丈夫?苦しくない?」

思考の整理がつかない…かろうじてハルに、うなずいて見せる。

「良かった、魔法ちゃんと使えたんだね…深谷君すごいなー」

…自分は確かに海の中にいる…

体が海水に浮かんで軽くなり、包まれた感じが気持ちいい…

あの本に書かれていた事は、本当だったんだ…

「うん、そうだね。深谷君のおかげで、死なずにすみそうだよ…ところでどうやって、この建物の外に出ようか?」

「…!ハル、自分の考えが分かるの?そう言えば、さっきから声が…」

耳以外を通して、自分の中に伝わってくる…
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