海の花は雪
風の音で、大きくない自分の声は届かず、返事の代わりにたずね返された。

「えー?何?ごめん、もう一回いい?」

「…何でもない」

「えーー?」

「今日、用務員室行く?」

「そうだね〜詳しく打ち合わせしたいし、山形さんも来るって言ってたしね〜」

「そっか…」

目を閉じると、昨日の夜に見た、長い夢が頭に浮かんできた…

どうも三人で一緒に寝たせいか、今までよりも鮮明な夢を、何個も何個も見てしまったようだ…

おかげで体は、ぐってりとしていて疲労感が抜けず、寝た気がしない…

きっと山形さんも同じだろう…

それに比べてハルは、ぐっすり眠れたようで、何かの歌を口ずさみながら、軽快に自転車をこいでいる…

ふと視線を上げると、海岸線の向こうに花咲学園の校舎が見えた。



…どうしてハルは、いまだに何も思い出さないのだろう…

何か思い出したくない理由が、あるから…だとしたら…?

それは、たぶん…
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